2019年12月に世界で初めて確認されてから今もなお、世界を脅かしている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)。
基礎疾患のある方や高齢者の重症化率が高いことは一般的になっていますが、性別によっても罹患率や重症化率が異なることはご存知でしたか?
COVID-19に対する向き合い方の違い
2020年10月、世界8カ国の2万1,649人を対象にした調査の結果、女性が男性と比べて新型コロナウイルス感染症に罹患しにくい理由の一つは、ソーシャル・ディスタンシング政策を守る比率が高いためであることが、Galasso氏らによる新たな調査によって示されました。
*ソーシャル・ディスタンシング…感染拡大を防ぐために物理的な距離をとること。社会的距離。テレワークや3密を避けることも含む。
その結果、新型コロナウイルス感染症COVID-19を深刻な健康問題と捉える人や、パンデミックと闘うための公共政策に従う人の数には、有意な性差のあることが判明しました。
例えば、3月に実施した調査でCOVID-19を深刻な健康問題と捉えていた人の割合は、女性で59.0%であったのに対し、男性では48.7%でした。
この割合は、4月の調査では男女ともに15%以上減少しましたが(女性39.6%、男性33.0%)、性差は有意なままでした。
Galasso氏は、「政策立案者が、移動制限やマスク着用などの行動様式の変容から成る“新しい日常”を促進する上で、男性の遵守率を増やしたければ、性別に合わせた伝達方法を考える必要がある」と述べています。
【出典】 Vincenzo Galasso et al. Gender differences in COVID-19 attitudes and behavior: Panel evidence from eight countries. PNAS. November 3, 2020; 117 (44) 27285-27291
免疫システムの違い
COVID-19の疫学的研究が進むにつれて、女性よりも男性の方が、重症化しやすい傾向にあることが明確になってきました。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫システムの反応が、男女間で異なることを示す研究結果が発表されたのです。
この研究を実施した米イェール大学のAkiko Iwasaki氏らは、「女性と比べて男性ではCOVID-19が重症化しやすく、死亡リスクも高い理由の一端を説明し得る結果」と、同大学のニュースリリースの中で述べています。
詳細は「Nature」8月26日オンライン版に掲載されており、新型コロナウイルス感染症に感染中の女性患者の方が男性患者より強力なT細胞(ウイルスへの免疫等に関わる細胞)の活性化が示されたということです。
【出典】Takehiro Takahashi, et al. Sex differences in immune responses that underlie COVID-19 disease outcomes. Nature. Aug 26, 2020; 588, pp315–320
終わりに
意識の違いから来る行動の違い、そして、免疫システムの違い。
これらのことから、男性よりも女性の方が新型コロナウイルスに罹患しにくく、また、重症化しにくいことが分かっています。
しかしながら、大切な健康と社会生活を守るため、性別問わず適切な対応をこれからも心掛けましょう。