年齢を重ねるに従って、特に男性においては「尿酸値が高くて…」「痛風が…」「プリン体オフのビールを飲み始めて…」などという会話を聞くことが増えますが、その正体をご存知ですか?
今回は、尿酸の正体とそれに関わる病気についてご紹介します。
尿酸の正体と、体内で作られる仕組み
尿酸は、肝臓で生成される代謝物の1つで、食べ物由来の外因性プリン体と、体内にあり遺伝情報を伝えるDNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)等の核酸の分解で出きた内因性プリン体が原料です。
プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質として生命活動に必要な物質ですが、過剰摂取により高尿酸血症や痛風発症リスクの上昇などにもつながります(後で詳しくご説明します)。
尿酸は悪者なの?
尿酸は様々な病気の原因となるため悪者のよう思われがちですが、ヒトにとって必要不可欠な物質でもあります。
血中に存在し、生理的濃度(5.0mg/dL程度)で血管内皮機能の維持に働いているとされ、2.0mg/dL以下の低尿酸血症の状態は避けなければなりません。
しかし、尿酸が血中に溶けることができる限界濃度は7.0mg/dLで、それ以上に尿酸値が高まると関節だけでなく、全身の細胞内に取り込まれて臓器障害を引き起こします。
その機序としては、細胞内に蓄積した尿酸により活性酸素が産生されるルート、体内での尿酸合成に伴いキサンチンオキシダーゼ(XO)が活性化されて活性酸素が増加するルートの2つが考えられます。
尿酸値が高いことで引き起こされる病気
尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が「高尿酸血症(hyperuricemia)」で、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害、痛風結石、尿路結石など)の病因となっています。
それだけでなく、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧などの合併症を引き起こし、動脈硬化による脳卒中や心臓病にまで発展する可能性がある、非常に危険な状態となります。
また、尿酸値の高い高血圧患者は、降圧薬を処方されていても、血圧が目標値に到達していないことが多いという、日本人対象の研究結果が報告されています(宮崎県高千穂町国民健康保険病院腎臓内科の佐藤祐二氏らの論文)。
【原著論文】Yuji Sato, et al. Higher baseline uric acid concentration is associated with non-attainment of optimal blood pressure. Plos one. July 27, 2020; 15(7)
尿酸値が高くなる原因
尿酸の原料となるプリン体は、食べ物由来と、DNAやRNA等の核酸の分解でできたものがあることは最初にお伝えしました。そこから、尿酸値が高くなる理由を紐解くことができます。
産生過剰型
尿酸の生成が過剰なタイプです。プリン体を多く含む食べ物や飲み物(肉類・魚介・ビールなど)のほか、果糖の過剰摂取が原因と考えられます。
排泄低下型
本来尿酸は尿として体外に排出されますが、その機能が低下しているために体内に尿酸が蓄積してしまいます。この原因は、肥満や糖尿病・アルコールの過剰摂取などと考えられています。
産生過剰型、排泄低下型、いずれも食生活や肥満など、生活習慣の乱れが大きな原因であると言えるでしょう。
ただ、食生活以外にも、激しい運動やストレス、時に楽しいことや嬉しいことといった精神的な高揚感が続くことでエネルギー消費が多くなり、尿酸が過剰に作られるとともに、ストレスによってホルモンの分泌が変化することで尿酸の排泄機能が低下し、血清尿酸値が上昇することもあるようです。
寿命と痛風の関係
人類史上最も長生きをしたのは、フランスのジャンヌ=ルイーズ・カルマンという女性で、122年164日生存したと言われています。
ヒトの血清尿酸正常値は7mg/dl以下ですが、寿命が長くなると、抗酸化成分である尿酸レベルが上がり、 痛風になりやすいのです。
尿酸値は男性、特に年齢とともに上昇し、高尿酸血症のリスクが高まります。女性でも数は少ないものの、年齢とともにやはり上昇し、更年期を迎え閉経するとその傾向が強くなるので注意が必要です。また、女性においては、血清尿酸値が7.0 mg/dl以下であっても、血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなることが分かっています。
終わりに
体に必要でありながらも過剰になると様々な害を及ぼすプリン体、そしてそこから産生される尿酸。
その正体と引き起こされる病気について、ご理解いただけたでしょうか。
次回の<健康長寿を目指して>のコラムでは、尿酸値改善のためにできることをご紹介したいと思います。