英国・オックスフォード大学のバトラー氏らの調査によると、インフルエンザ様疾患で初期段階において病院を訪れた際、通常ケアにオセルタミビル投与を追加した場合、通常ケア群よりも回復期間が平均で1日、重症で発症からの期間が長く併存疾患がある65歳以上の患者では2~3日短縮されることが示されました。
一方で、オセルタミビルを投与した人たちの中には、嘔吐や吐き気の負担の増加も観察されたようです。
対象人数、回復の目安
主要評価項目は、患者報告による「発熱・頭痛・筋肉痛が軽減または消失し、通常の日常活動へ復帰するまでの回復期間」と定義され、また、年齢、併存疾患、症状重症度など36種のサブグループでも評価されました。
そもそも、インフルエンザ様疾患とは?
一般的に、「インフルエンザ様(よう)」は、「インフルエンザのような」「インフルエンザに似ている」という意味の表現で、発熱・倦怠感・食欲不振・咳などの他、鼻水・咽頭痛・吐気・嘔吐・下痢など、普通の風邪に比べて重い症状を示す状態のことを言います。
なお、今回の研究で対象となったのは、3回の季節性インフルエンザ流行期(2016~2018年)に、年齢1歳以上、インフルエンザ様疾患(自己申告による突然の発熱がみられ、1つ以上の呼吸器症状(咳、喉の痛み、鼻水、鼻づまり)および1つの全身症状(頭痛、筋肉痛、発汗/悪寒、疲労感)を伴い、症状持続期間が72時間以内)であった3,266例です。
オセルタミビルってどんな薬?
インフルエンザウイルスに効く抗ウイルス薬です。スイスのロシュ社により「タミフル」の名称で販売されていると言えば、イメージしやすいかも知れません。
ウイルスが宿主(宿主)細胞から別の細胞へと感染を広げる際に必要となるノイラミニダーゼという酵素(糖タンパク質)を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制する仕組みになっていて、A型、B型のインフルエンザウイルスに作用します(B型には効きにくい傾向がある)。
最後に
バトラー氏らは、「併存疾患を有し、体調不良が長く続く症状が重い患者や高齢患者では、オセルタミビルにより回復が早まる可能性があるため、本薬を考慮してよいと考えられる」としています。
インフルエンザ様疾患が見られる場合、ご自身の状態や既往症と併せてかかりつけ医に相談して投与の判断を仰ぐのが良いでしょう。
【参照】CareNet「インフルエンザ様疾患にも抗インフル薬が有益か」
【原著論文】Butler CC, et al. Oseltamivir plus usual care versus usual care for influenza-like illness in primary care: an open-label, pragmatic, randomised controlled trial. Lancet. 2019 Dec 12. pii: S0140-6736(19)32982-4. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32982-4. [Epub ahead of print]