生命の起源には諸説ありますが、生命に必要な有機分子が豊富な太古の海から誕生したというのが最も有力な説となっています。
単細胞生物やバクテリアのような微小な生物から始まって数十億年。
私たちの身体に未だに留まる当時の名残と<健康と美>のヒミツの関係を、太古の昔に遡って解明していきましょう。
35億年前の海水中の主成分濃度
生命が誕生した35億年前と現在の海水の成分、何となく随分と成分が変わっていそうなイメージがありませんか?
ところが意外なことに、大きな変化はないのです。
表1. 35億年前の海水中の主成分濃度(計算値:g/l)
塩分濃度と生命
そして、海水を1/4に希釈したイオン成分は細胞外液の組織とよく似ているのです。
古代の生物は、変化する様々な成分や濃度に順応しながら声明を維持し、また、進化していったようですね。
(細胞外液とは細胞外に存在する体液の総称で、体重のおよそ20%を占める重要な成分です。)
図1. 海水と細胞外液のイオン組成の比較
海水と体液
動物の血液など体液の無機イオン組成が海水のそれと似ていることは、生命が海で誕生したときの海水の組成のなごりとも言われています。
表2.海水と血清のおもな無機イオンの種類と割合
(引用 海水の成分:海洋科学 別冊「海洋科学研究」海洋出版、海洋学講座「海洋微生物」東海大学出版会、百科事典 平凡社、血清の成分:生物化学ハンドブック 技報堂)
また、点滴に使われるリンゲル液やロック液は浸透圧やイオン組成を調整した体液(血液)の代用液であり、その塩類組成は海水の塩類組成とよく似ているのです。
細胞外液は、循環血液量を維持し、栄養素や酸素を細胞へ運搬したり、老廃物や炭酸ガスを細胞外に運び出す役割をしていて、健やかな体を保つのにとても重要な役割を果たしているんですよ。
(引用 海水の成分:海洋科学 別冊「海洋科学研究」海洋出版、海洋学講座「海洋微生物」東海大学出版会、百科事典 平凡社、リンゲル・ロック液:百科事典 平凡社、医学大辞典 南山堂)
最後に
少し難しい話になってしまいましたが…
こんな風に太古の海~現代の海~私たちの細胞に密接な繋がりがあるなんて、面白いですね。
それでは次回は<生命の維持のカギ、浸透圧の調整>についてご説明したいと思います。