頭部冷却の基礎知識
頭を冷やすのは何のため?
頭を冷やすのは何のため?目的によって異なる冷却の考え方

暑い日に冷たいタオルを頭に当てる。熱が出たときに氷枕を使う。抗がん剤治療に合わせて頭皮を冷やす。同じ「頭を冷やす」という行為でも、その目的は異なります。
暑さへの対処なのか、発熱時のつらさを和らげたいのか、治療に伴う脱毛を軽減したいのか。目的が変われば、冷やす場所や方法、期待できることも変わります。まずは、この三つを分けて考えてみましょう。
暑いときは、頭のひんやり感だけで判断しない
暑い日の外出や屋外作業では、頭や顔の周りを冷やしたくなることがあります。ただ、頭に冷たさを感じていても、それだけで熱中症対策が十分とはいえません。
厚生労働省は、熱中症の予防として、エアコンでの室温調節、日陰の利用、こまめな休憩、水分補給などを挙げています。保冷剤や冷たいタオルなどで体を冷やすことも、その中の一つです。
頭を冷やす道具を使っていても、暑い場所に長くとどまったり、休憩を減らしたりしないことが大切です。冷却は、暑さを避ける行動と組み合わせて考えます。
熱中症が疑われるときは、体全体への対応が必要
暑い場所でめまいや立ちくらみなどが出たときは、単に「頭を冷やして様子を見る」という対応では不十分です。
涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめ、体を冷やします。厚生労働省は、首の周り、脇の下、足の付け根などを冷やす場所として示しています。水分を自力で飲める場合は補給し、自力で飲めない、意識がない場合は、すぐに救急車を呼びます。意識がない人に無理に飲ませてはいけません。
熱中症が疑われる場面では、頭の冷却だけに集中せず、必要な応急処置と救急対応を優先します。
発熱時は、本人が楽になるかを確かめる
発熱したときの氷枕や冷たいタオルは、頭の熱さや不快感を和らげるために使うことがあります。「熱があるから、必ず頭を冷やさなければならない」と考える必要はありません。
日本小児科学会の「こどもの救急」では、子どもの発熱時の家庭での対応として、本人が気持ちよさそうな場合に、氷のうを頭や首に当てるなどの冷却を案内しています。暑がっているか、寒がっているかも見ながら対応する考え方です。
冷却を嫌がる子どもに、無理に続けることを目的にしてしまわないようにしましょう。また、頭を冷やすことだけで、発熱の原因への対応が済むわけではありません。
子どもに元気がない、ぐったりしている、呼吸が苦しそうといった様子があれば、冷却の方法よりも受診の判断が重要になります。生後3か月未満の発熱も、特に注意が必要です。
抗がん剤治療では、脱毛の軽減を目的に頭皮を冷やす
医療機関で行われる頭皮冷却は、暑さ対策や発熱時の冷却とは目的が異なります。一部の抗がん剤による脱毛を軽減するために、治療に合わせて頭皮を冷やす方法です。
髪の毛をつくる細胞は活発に分裂しているため、一部の抗がん剤の影響を受け、脱毛が起こることがあります。国立がん研究センターは、脱毛を軽減する目的で頭部冷却装置を導入している医療機関があると説明しています。

冷やす仕組みだけでなく、実施する条件も重要
英国の大学病院UCLHは、頭皮冷却の働きとして、頭皮の血管を収縮させて毛包に届く抗がん剤の量を減らすことや、毛包を薬剤によるダメージから受けにくくすることを説明しています。
ただし、頭皮冷却を行えば脱毛を完全に防げるわけではありません。適しているかどうかは、使用する薬剤や患者さんの状態などによって判断されます。冷却による頭痛や寒さなどの負担もあるため、医療者から説明を受けて検討する必要があります。
そのため、医療としての頭皮冷却について書かれた情報を、そのまま家庭で頭を冷やす方法に当てはめることはできません。「頭が冷たくなる」という共通点だけで、同じ効果が得られると考えないことが大切です。
冷たければ冷たいほどよい、とは限らない
目的にかかわらず、皮膚の冷やしすぎにも注意が必要です。
東京都は、保冷剤による凍傷への注意を呼びかけています。保冷剤が直接地肌に触れないようタオルで包むなど、皮膚を守って使用します。冷却用品はそれぞれの使用上の注意を確認し、長時間同じ場所に当て続けないようにしましょう。
医療機関で行う頭皮冷却については、家庭用の冷却用品の使い方から自己判断せず、担当する医療者の指示に従います。
まず「何のために冷やすのか」を確かめる
頭を冷やす方法を調べるときは、道具を選ぶ前に、目的を確かめてみてください。
暑さ対策なら、涼しい環境や休憩、水分補給を含めて考える。発熱時なら、本人のつらさや全身の様子を見る。抗がん剤治療に伴う頭皮冷却なら、治療内容に応じて医療者と相談する。
同じ冷却でも、必要な対応は一つではありません。「どれだけ冷えるか」だけでなく、「何のために、どのような条件で冷やすのか」を知ることが、自分に合った方法を考える出発点になります。
参考資料
暑さ対策・熱中症への対応
[1]厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
室温の調節、日陰の利用、休憩、水分補給、体の冷却など、日常の熱中症予防について参照しました。
資料を読む
[2]厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」
涼しい場所への移動、体を冷やす場所、水分補給、救急車を呼ぶ必要がある状況について参照しました。
資料を読む
子どもの発熱時の対応
[3]日本小児科学会「こどもの救急」発熱関連ページ
子どもが気持ちよさそうな場合の冷却と、発熱時に確認する全身の様子について参照しました。この資料の対象は子どもであり、成人への対応を示す資料ではありません。
家庭での対応を読む
発熱時に確認する症状を読む
抗がん剤治療に伴う頭皮冷却
[4]国立がん研究センター がん情報サービス「脱毛」
がん治療による脱毛の仕組みと、脱毛の軽減を目的とした頭部冷却装置について参照しました。
資料を読む
[5]University College London Hospitals NHS Foundation Trust「Scalp cooling」〔英語〕
医療機関で行う頭皮冷却の目的、仕組み、効果の限界、適応の判断、冷却に伴う負担について参照しました。英国の一医療機関の患者向け資料であり、実施条件をそのまま日本のすべての医療機関に当てはめるものではありません。
資料を読む
冷却用品の安全な使用
[6]東京都消費生活総合センター「保冷剤での凍傷に注意!」
保冷剤による凍傷の危険性と、地肌に直接触れないようにする注意点について参照しました。
資料を読む
※これらの資料は一般的な冷却や医療機関での頭皮冷却に関するもので、特定の市販商品の効果を示すものではありません。
- 2026.10.23
- 12:55






